オックオムボック（Ooc-Om-Bok）、どこか可愛らしい語感のする奇妙な名はベトナムのメコンデルタの片田舎、ソクチャン省で行われる祭りのことである。メコンデルタにはベトナムの多数を占めるキン族ではなく少数民族であるクメール族がほとんどを占める。このソクチャンも例外でなくほとんどがクメール人だ。そして伝統的にクメール人にとって人気のあるスポーツがボートレースなのである。スポーツといっていいものかよくわからないがメコンデルタのような水路が張り巡らせた地域ではボートは生活の足そのものである。そのクメール族にとっての最大のボートレース祭典が10月の満月にこのソクチャンで行われるオックオムボックである。
　このボートレースではその住民の地域の寺院で基本的にチームが組まれる。ボートは寺院の所有であるらしい。そして勝者の賞金はその寺院に寄付となる。したがって選手は自分の懐よりも精神的な部分で勝負をしているのである。今回はそんなメコンデルタのクメール族最大の祭りを紹介する。